大阪ライブシアター

【逆転の発想】タップダンスは足元を気にするな

大阪ライブシアター
Photo taken with Focos

タップダンスは、足元を見せてはいけません。

 皆さんはTikTokとかでダンス動画が沢山流れていますが、好きですか?
 僕は、TikTokが出たときに、これだって思いましたね。
 ショート動画で誰もがダンサーになって、発信できる。
 好きな振り付けを共有して、特にZ世代に影響する。

 すごいSNSだとおもいました。

 でも、タップダンスの動画ってバズらない。
 なかなかメジャーシーンには出てきません。

 以前、タップは動画でその魅力は伝わらないということをお伝えしました。
 タップには、モーションに合わせて、音の雰囲気。迫力。それは動画では伝わりません。そんなことをお伝えしました。

 僕は大阪ライブシアターというタップのグループのCEOしてるんですが、最近レッスンでも、こうかな?ということを感じてきたこともあり、今、動画発信のプロジェクトを進めています。
 これは、レッスンの進め方、彼らの成長を支えるメソッドであるとともに、マーケティング戦略としても考えており、今日はそのことをお伝えしたいと思います。
 ぜひ、タップのみならずダンスをされている方、またマーケティングに興味がある方、さらに教育現場に関われている方も最後まで見ていただけたらと思います。

今日お伝えしたい結論は、
 タップを良さを伝えるのに、足元チラ見の動画発信する。
です。

マウントしてないか?その動画

 いろんなタップダンス動画を見てると、これできないだろう!というテクニックの応酬動画が多いように思います。
 僕はタップをやっているので、すごく面白い。
 でも、ある人にとっては、タップを楽しいものにしてないんじゃないか。
 言い換えると、その姿勢こそが、タップを遠い存在にしてるんじゃないかと思います。

 タップダンスを始めたきっかけは、人それぞれだと思います。
 僕の場合は、世の中に存在感を示したい。そう思って、シアターダンスを始めた1ヶ月後から始めました。
 何もなかった僕のライフステージが20歳のある日からから始まり、今に至ります。

 そんなふうに自分の殻を破りたいから、始めたという人が多いのではないでしょうか。

 僕と同じような思いを持っているタップアーチストはもしかしたら多いかもしれない。
 だから、ある程度誰かに見てもらいたい。できるところを。
 成長した自分を!
 そんな思いで動画を作っている人も多いのではと思います。
 僕もそう。

 僕は、タップをライフスタイルの中に入れて、素敵にすごせるようにと思って活動しています。

 そこから視点に立てば、何か、大事な視点が欠けているかも?

 そう、マウントしているんです。
 マウント。つまり、「君たちにはできないだろう フッフッフッ」
と聞こえてきそうな、おごりが。

 タップの魅力を伝える上で、すでにタップができる人と、これから始めよう、まだやったことのない人。伝えるべきメッセージはおそらく違う。

 タップのできる人には、「こんなこともできるよ」という動画。これは結構、巷に溢れています。なぜなら、アーチストは本来的にこれを発信したいから。
 絵でも音楽でも、自分の作品を発信して、誰かの感情を動かしたいから。タップではすごい!と思わせたいから、アーチストを目指すんです。

 でも、僕は、すごい と思わせるタップは目指してない。というか、諦めた。タップって動きが細かくて、誰の目に触れても、その凄さは伝わらないと思います。でも誰の目に触れても伝わりやすいのは、靴音が鳴りながら、世界観や音楽を伝えるその手段。五感で心を揺さぶるネタの多さだと考えています。

 シネマティックに伝える。そこに僕の原点があるように思います。動画も舞台もそんなふうにつくっていきたい。そう思います。

無機質じゃないか?その動画

 その一方、初めてやる方向けに、基礎を伝える動画もたくさんあります。フラップ、シャッフル、パドルロール、基礎的なステップを一つ一つ。
 僕もこの動画を出しています。

 でも今作ったのを見ると、やはり魅力がない。それは、タップのハウトゥーは地味でやってみたいと思わないからです。
 タップって、膝を緩めて、自由に動かすことが必要ですが、これがどうも、素敵じゃない。タップの世界観を伝えるような内容にできない。
 ダンスでも基礎は、バレエならバーレッスン、シアターならアイソレーションやストレッチなど、でもこれをみててもやってみたいと思わないと思うんですよね。

 タップの魅力は、なぜそんな音が鳴るのかという不思議さもあります。
 その種明かしを伝えるんですが、やってみたいと思わない。

 僕はです。

 それはなぜか・・・・・
 無機質な気がします

 コンクリートで作られたビルの一室でタップをやっても、そこには、生活感や、それを同じことをしたいと思わない。
 そう、基礎は無機質ではやりたいとは思わない。

 要は、なぜ人は何に引き付けられるか。それは、価値提供。
 ダンスでいえば、これができるようになる自分のイメージをかたちにするもの。
 そこには感情という彩りが必要ではないかと思います

 tiktokでみるダンスは、どれも少し覚えれば同じように動ける。そんなところに魅力があります。
 でもタップは基礎ができても、たぶんそこじゃない。動画を見たい多くの人がイメージするのは。
 だから、動画で伝えるなら基礎がわかりやすくできる プラスアルファの価値、彩りが必要と思います。

本能に働きかける

 脳には左脳・右脳に各々感じる・考えるというの役割を持っていて、だれもが4つのキャラクターを持っています。
 多くの人は左脳で考えるキャラクターが自分であると意識しますが、自分そのものは右脳で感じる部分。ここは本能、いわゆる無意識の部分です。
 例えばビジネスでも、左脳の考える部分では利益を上げたい、左脳の感じる部分では、アイデアや細部をもてあそびたい、右脳の考える部分は、とにかく楽しいことをしたい、そして右脳の感じる部分ではより良きことをしたいと考えています。
 要は、人だれしも、自分と他人は一体。より良きことをしたいと考えている。そういう生き物ということです。
 ダンスや、ピアノ、アートは、感じる右脳を具現化するものであり、だれもが一体になりたい。歌、ダンスを通してそれが求められているのではと思います。

 動画を見て、思わず一緒に動いてみたくなる。それは、感じる右脳に働きかけること。

 やり方を見せても、マウントしてすごいところを見せても、左脳に働きかけちゃって、人のココロは動きません。
 じぶんもいっしょにやってみたい。コミュニティに入っていきたい。それがココロが動く瞬間ではと思います。

いっしょに踊りたくなる

 今、タップレッスンは2レッスンやっていて、1stグループと2ndグループに分けてます。
 2ndグループの皆さんは、大体2~3年ほどやってて、タップのいろんなテクニックは動けるようになってきています。いわゆる、タップをできるようにはなってきました。
 次は伝える段階。人に伝えてさらに楽しいのがタップの醍醐味です。

 タップは靴音を音楽に合わせます。
 楽しそうに見せる、曲の感情を表現をするとかいうのが、ダンサーとしてのマインド。次のステップです。

 最近のレッスンでは、振付を4カウントずつ コールアンドレスポンスで進めています。それは、音と雰囲気を4カウントずつ刻み、徐々に増やしていく。そんな感じです。
 特に靴音は感情も表現できます。その表現を靴音でコールアンドレスポンスで伝えます。間違えてはいけないところを大きな靴音で伝えたり、また細かい小さな音は小さくして感情表現を伝えます。
 上半身の表現も、特に前から自分を見たときのイメージをしてもらいながら、伝えます。
 最近の2ndクラスのレッスンはこんな感じです。

 タップの仕組みを理解しようとすると、どうしても左脳で考えちゃいます。これを払しょくするのがテーマ。自分の本能、右脳を信じて、靴音とイメージで創り上げていく。
 なかなかうまく行かないことも多いですが、あっ出来た!という瞬間は、レッスンの中では数回あって、その時にはパッと通じ合えるものがあります。
 こどもは、これを素直に受け入れやすい傾向にあります。大人は、仕組みを覚えていきたいというアプローチで進めることに固執する場合があります。ぼくもそうでした。でも、靴音とイメージだけで振付ができるようになる瞬間は、いわば無邪気なこどもに戻れる瞬間とも言えて、それが一番至福の喜びになります。

 さて、動画に話を戻して、

 今、上半身だけで伝えられる。上半身だけで踊る靴音がイメージできる動画づくりを進めています。
 また、集団でなく、レッスン生ひとりひとりがソロで映る動画

 これには2つの狙いがあります。

 一つは、レッスン生がじぶんのイメージをどの程度アプローチできているか把握すること。動画の中の自分を変えるのは自分でしかありません。だから、編集してレッスン後に提供しています。だから、ぼく自身も今、TiktokやInstagramでソロでタップの動画を出しています。
 足元を映さない、いやチラ見くらいですが、それは、画面に向けてタップじゃなく、自分自身を表現できるかということを意識するためです。

 そのうち、レッスン生が自ら「もっと発信したい」という思いを持ったら、自分でできる動画編集テクニックなども伝えていきたいと思っています。
 近いうちに、レッスン生のみんながTikTokやInstagramで自分を発信できる動画を皆さんも見ていただけるかもしれません。

 もう一つは、動画でタップを見て、ココロが動かされる人を増やしたい。でも伝えるのは、技術ではなく、タップの楽しさ、豊かさ、雰囲気

 伝えて、やってみたいってココロが動かされること

 それには、すごいタップ、分かるタップは僕には必要ない。

 上半身だけで伝えられる。上半身だけで踊る靴音がイメージできる動画で「なんかこれ好き!」っていう作品作りを目指して、レッスン生のみんなと進めていきます。

 タップで足元をチラ見した映さない動画って、ほかにない発想。
 マーケティング的に見ても僕はいいと思うんですよね。

 タップっていうと、だれもが知ってるけど、なんか難しそう。できそうにないって思うイメージ。でも、それを払しょくして、音が音楽に乗っている感覚と表現、彩り、音と身体のモーションで感情が揺さぶられる。
 そんなことを狙っていきます。